がん光治療の新展開
光治療について、当コラムでも5年ほど前にICGリポソームを用いた治療の可能性について書きましたが、緩やかな効果はあるものの、進行の早いがんの方には有効ではないこともあり試行錯誤を続けておりました。その後、アキャルクスを用いた頭頚部癌に対する光治療が保険診療として認可されニュースになりましたが、厳しい治療対象の適応制限などで、残念ながら多くの患者様への貢献には至っていないと思われます。我々はもっと有効な光感作剤はないものかと模索を続けてきまして、IR783に出会い、そのリポソーム加工をすることでの臨床的有効性が確認できましたので紹介します。
もともとIR783は癌細胞のミトコンドリアへの作用などで癌細胞の増殖抑制効果が報告されていた物質です。このIR783は近赤外線に反応して活性酸素を発生し癌細胞を傷害する作用も有しており、光治療として行うことで2重の効果が期待できると考えました。その臨床結果が2024年12月に論文掲載されましたので紹介いたします。http://www.mdpi.com/2079-4983/15/12/363
下図左のMMTのグラフは肺がんの細胞に投与したところ、IR783リポソームが低用量で癌細胞を死滅させていることが証明できました。この検討では低濃度であったため、リポソームに封入したIR783のみが有効であり、下図右のように、がん細胞に取り込まれているのも確認できております。(紫がIR783の蛍光)
今後IR783リポソームを用いた光治療により、がん治療としての有効性を高めることができればと考えております。
No.61