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神経疾患への水素ガスの可能性

 先日シカゴでAHAという世界的な学会に参加してきました。

グループである東京銀座メディカルクリニック・院長の研究グループの発表でした。間近で聞いて参りましたのでご報告致します。

院外心肺停止に至るような病気(主には心臓発作や不整脈ですが)になりますと、心拍が再開するまでの時間がかかればかかるほど、脳が虚血状態になるため脳死や植物状態になる確率が高まります。実際に倒れてから救急車が来るまでの時間に、周りの人が心臓マッサージをしていたかどうかなどで、神経学的予後(退院できるときに、どの程度脳の働きが正常に戻れるか)に大きな差が出ます。そのため、現在では救命の市民講座やAEDの使い方教室なども多く開かれていますが、病院に着いたときには既にその方の神経学的命運は決まっているといっても過言ではありませんし、あとからその時間をカバーする方法は、直近20年前から低体温療法(体温を33度くらいに下げて、臓器の損傷を予防する方法)のみでした。

しかし、今回の発表は入院後最初の6-24時間の間に2%の水素を吸入させると、90日後劇的に神経学的予後が改善するというもので、画期的な改善策が水素であったという内容です。

水素に関しては、ガスがいいとか水がいいとか、ガス発生機を家に置いて数時間以上吸入するのが良いなどなど、ネット上にも所説あふれています。しかし、動物での活性酸素を除去したというデータを人間の、特に脳の症状に適応するには疑問もありますし、活性酸素自体はがん治療にむしろプラスに働くので、取り除くことが必ずしも良いのかも実際にはよく分かっていません。

今回は心臓が一度止まった方に、最初の24時間以内に吸入するという条件で、90日後の予後を見ている研究であり、かなり信頼度も高いものです。また、人工呼吸器で患者の吸うもの吐くもの中での水素濃度がコントロールできている条件での研究ですし、リハビリ期間などに長期間にわたって吸入したわけではない点が、コスト的にも大変優れていると思われます。

今回の発表で、ちまたの水素治療すべてにまるが、ついたのではないことを留意する必要がありますが、急性期疾患での神経損傷という事に関しては、かなり画期的な水素の吸入効果が世界で証明されたものです。当院では慢性疾患であるがん治療の水素に対するスタンスとしては、未だ中立の状態ですが、今後の水素の報告をつぶさにフォローしていきたいと思っています。

 

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