リラックスのために 星状神経ブロック療法
星状神経節とは、首の付け根にある交感神経が密集している神経の部位です。これは背骨の左右を頭から腰方向に走行する交感神経とつながる膨らんだ部分(節)ですので、全身のいろいろな臓器に分布する交感神経の働きと関与しています。この星状神経節を麻酔をかけて、交感神経を眠らせてあげて副交感神経を優位にするのが、星状神経節ブロックという治療になります。
交感神経は、心臓の拍動をふやす、血管を収縮し血圧をあげるなどの緊張した状態の働きがあり、副交感神経はそのほぼ反対の作用をつかさどります。交感神経副交感神経をあわせて自律神経とも言いますが、自律神経失調症というような症状はこの2つのバランスが乱れた状態といえます。そして現代社会では、様々なストレスで交感神経の働きが過剰になっている方が多くおられますので、交感神経を休ませ、リラックスする副交感を優位にしてあげることで様々な症状に効果を出そうとするのが星状神経節ブロックの理屈です。
この治療には2つの課題がありまして、一つは保険適応されているのは主に上半身の症状の場所を限定したものへの治療であることです。ところが交感神経は頸部から足先のほうまで連絡を取り合っているので、星状神経節をブロックすることで下半身や内臓の様々な症状も緩解することが報告されています。(例 頻尿、アレルギー、潰瘍性大腸炎など)ですので、保険診療での適応としぼると、その効果が十分に発揮できていない可能性はあります。もう一つの課題は、麻酔の手技による合併症です。首に針を刺すとか、聞くと相当怖いですし、実際に星状神経節の周囲には頸動脈など重要な血管もあり、術者のテクニックに依存しています。わたくしは循環器内科医ですので重要血管などの扱いには慣れているほうですが、それでも抵抗感はあります。
当院では自由診療ですので、全身の様々な症状の患者様に、他の治療と併用で用いて経過をみております。また近赤外線を用いたスーパーライザーという機械で、頸部に照射することで、針を用いた麻酔注射の60-70%程度の効果もいわれているようですので、針を刺すリスクを回避できる可能性が出てきています。実際に近赤外線照射を星状神経節にしてみますと、複数回あてれば眠りやすくなったり手足の冷えが取れるなどの効果も見られていますし、照射直後の手のひらの温度などは0.5度くらい上昇する方が多いようです。針を刺さずにどの程度効果があるのかなど課題は残りますが、今後コラムで報告していきたいと思います。
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